夏に実家に帰ったときに、どういう話の流れやったか、母親からレシピ本をもらった。はじめに渡されたものはここ数年に発行されたもので、もっとクラシカルなものがほしいとゴネたら、まさしく期待したような、小林カツ代さんの『ふだんが一番。』をくれた。

ここに載っている料理たちを食べたことがあるかは覚えてないけど、くたびれ加減・波打ち加減に濡れた手で何度も何度もめくられてきたことはわかる。というかどんな料理を母親が作っていたかってあんまり覚えてない。実家を出るまで米を研いだこともないくらいぬくぬく育ててもらったっていうのに腹が立つ。とは言え、料理に限らず大抵のことをあんまり覚えてないから許してほしい。
母親は、数年前に病気を患ったときに、本をいくらか処分したらしい。初めて聞いた。まあ結局そのあとどんどん買ってるんやけど、と笑っていた。
豚肉とねぎのさっと炒め、小松菜と豚肉のしょうが炒め、秋のいんげんのスープ、れんこんのはさみ焼きを作った。はさみ焼きになるはずやったものはよくわからないものになった。お魚料理も作りたい。
ちょっと前に、待ち合わせまでの時間潰しでうろうろしてたポルタでやってた古本市で、小林カツ代さんの『働く女性のキッチンライフ』をジャケ買いした。本のジャケ買いって初めてかもしれん。走ってるけど、顔は正面をまっすぐ見据えてる。ミッフィーと同じか?手に持ってるものは原稿なのかもしれないと、あとがきを読んで思う。新井苑子さんという方のイラストは挿絵でもちょこちょこはまされ、どれも味わい深い。


おそらく前の持ち主が鉛筆で書いた丸や線がところどころにある。他人の心が動いた跡が可視化されてるってやばい。他人は私に本を貸してくれ。背表紙にバーコードすらないこの本は1981年に発行された。(バーコードが印字されるようになったのは1990年かららしい。)40年前。当時何歳の人が読んでたんやろう。いま何してはるんやろう。
「キッチンライフ」という通り、家庭を持って働く女性向けの効率的に動ける台所の作り方、買い物方法、家族との付き合い方などが書かれている。とにかく時間がないから手早く効率的に、というのは一貫してるけど、とは言え、求める水準は高く感じるし、配偶者はどこ行ったんやろうと終始思ってしまう。そんな気持ちで読み進めていたから、終盤の「台所仕事、料理をするのは女性と決めつけた上で、だからこそなんとからくにできるように考えているように思えて、そんな自分にイライラしながらも(P183)」という言葉にかなりグッときた。「息子には、何の手伝いもしない夫にはなってほしくない」という節もあった。
この本に感化されて調理用トングを買った。ついでに隣に並んでたスパチュラも買った。便利さに素朴に驚いてる。
自分の中の波を感じたので、『自炊者になるための26週』を読み始めた。ほんのちょっと読んだものの、ずっとキッチンに置いてた。キッチンに置いた本は読まない。今日は、書かれているようにかぶを蒸してオリーブオイルと塩と金山寺味噌をつけて食べた。夏に買った金山寺味噌の残りをスパチュラですくいきった。